近年、中露(中国•ロシア)は緊密な協力関係を築いて来たが最近漏洩したロシア軍の機密文書により余り知られていない一面、即ちロシア国家安全保障担当高官達の中共に対する深い疑念が明らかになった

その機密文書によるとロシア軍は中共からの侵略に対抗するための核兵器使用訓練を含め世界の主要国との紛争の初期段階で戦術核兵器を使用する演習をして来た

イギリスのフィナンシャル•タイムズ紙は、これらの機密文書を検証した専門家の話しとして、これらの文書にはロシア軍が戦術核兵器を使用する基準が記載されており、この基準はロシアが公に認めているものよりも低いものだと報じた

機密文書の中には2008年〜2014年に作成された29件のロシア軍の機密文書があり、その中に戦闘シーンや海軍士官向け訓練用の映像が入っていて、その映像には核兵器使用の運用原則についての議論も含まれていた

機密文書に記載されていた演習の１つはロシアが中国から攻撃を受けると想定したものだった

その演習は「北部連邦」と呼ばれるロシア軍が「南部」からの侵略軍の第2波進撃を阻止するため戦術核を使用した攻撃で対抗する可能性があると言うもの

フィナンシャル•タイムズ紙によるとプーチンが2001年に中国政府と「核先制攻撃禁止協定」を含む「中露善隣友好協力条約」を結んだ時でも上述の防衛計画のようにロシア当局が中共に対して深い疑念を持っていたことは明らかである

習近平が政権を握って以来、中露は協力関係を強化しており習近平とプーチンは少なくとも40回は会談を行っている

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以来、ロシアは欧米による全面的な制裁を受けた
しかし、中共はロシアとの貿易を拡大し重要な経済的ライフラインを提供してロシアを*した為、西側から非難を受けた

中露両国は表面的には親密に見え習近平とプーチンは「無制限」のパートナーシップを発表したがフィナンシャル•タイムズ紙が報じたロシアの機密文書はロシア東部軍管区が中共の侵略に対応するために様々なシナリオをシュミレーションしていることを示している

フィナンシャル•タイムズ紙の報道によって、ロシアが核兵器を国防政策の基礎として、どのように考えているかが外部に知られるようになり
また、先制核攻撃を行う為の部隊をロシア特定の条件下で、どのように訓練しているかなど貴重な視点を提供しているかが分かる

中国外交部の報道官は「ロシアを疑う理由は無いと否定し『中露善隣友好協力条約』は両国間の友好と非敵対の概念を法的に確立し世代から世代へ繋ぐ」と述べた

2月28日、ロシア大統領府の報道官は「ロシアは言及されているような文書の信頼性を強く疑っている」と述べた

ロシアは中国との関係強化に努め東部からウクライナへの軍隊を配備する一方で東部の防衛も強化し続けている

イギリスに本部を置く国際戦略研究所(IISS)の戦略、技術、軍備管理のウィリアム・アルバーク部長は「ロシアは中国国境に近い極東地域で核搭載可能なミサイルの強化とシュミレーションを続けている」
「これらシステムの射程距離から判断すると、このミサイルでは中国しか攻撃出来ない」と語っている

流出した文書にはロシア軍が2022年のウクライナ侵攻の前後に定期的に行って来た演習のパターンが反映している

NATOとアメリカ国防省で軍備管理に携わるウィリアム・アルバーク部長は、ロシアが昨年6月と11月に中国と国境を接する２つの地域で、核搭載可能なイスカンデル•ミサイルを使用した軍事演習を行ったと指摘した

アメリカに本部を置く戦略国際問題研究所(CSIS)でチャイナ•パワー•プロジェクトの研究者のブライアン•ハート氏は、かつてソーシャルメディア「X＝旧Twitter」で中露関係について「中露関係はアメリカの多くの同盟国とは異なり共通の価値観や敬意に基づくものでは無く、主に利益に基づいており状況が変化すると利益も変化する」との意見を表明していた

ここ数年、中共は中央アジアでの影響力を強めようとしておりロシアの警戒心を招いている

2022年9月、習近平は中央アジアのウズベキスタンで開催された「上海協力機構」首脳会議に出席した
また、ロシア•ウクライナ戦争で多忙だったプーチンも自ら出席した

当時、専門家達は中露は一貫してアメリカと対立してはいるもののカザフスタンやウズベキスタンと言ったロシアの勢力圏内でも競合していると指摘した

機密文書は敵のロシア領土への侵入から、より具体的な理由までロシアの核兵器使用基準を明らかにしている

例えば敵がロシアの戦略弾道ミサイル潜水艦の20%、攻撃型原子力潜水艦の30%、少なくとも巡洋艦の3隻、飛行場の3ヶ所を破壊したり、沿岸の主要司令部や予備司令部を同時に攻撃した場合である

海軍士官向けの訓練用映像では核攻撃の可能性に関する明確な基準を説明している

これにはロシア領土への敵の上陸や国境地域の防衛を担当する部隊が敗北した場合や敵が通常兵器を使用して攻撃して来た場合が含まれる

映像では核兵器使用の基準が様々な要因の組み合わせとして纏められている

その中でロシア軍が損失を被ると言うことは元に戻れ無いようになるまで敵の侵略を阻止出来なかったことでロシアの国家安全保障にとって危機的な状況にあることとしている

ベルリンを本拠地とするカーネギー•ロシア•ユーラシア•センターのアレクサンダー•ガブエフ所長は「このような文書が公の場で公開されたのは、これが始めてある」
「これはロシア軍が通常の手段では望ましい結果を達成出来ない場合での核兵器使用の敷居が、かなり低い事を示している」と語った

ロシアの戦術核兵器は陸上、海上、航空機によって発射出来、ヨーロッパとアジアの限られた戦場で使用するように設計されている

これはアメリカに対して使用される大きな戦略核兵器のようなものでは無いが、1945年に広島と長崎に投下された核爆弾よりも遥かに多くの破壊力を持つエネルギーを放出出来る

ロシア軍は様々な目的を達成する為に戦術核を使用すると予想されている

例えば他国からの攻撃を阻止する事や軍事紛争の激化、侵略の抑止、戦闘や領土紛争におけるロシア軍の敗北の防止、及びロシア海軍を「より効率的」にする為に戦術核を使用する可能性がある

昨年、プーチンは「ロシアの核理論では核兵器の使用が認められる条件には２つある」と語った

１つは敵からの核攻撃に対する報復、もう１つは国家としてのロシアの存在自体が脅かされる時だ

しかし、両方の基準が満たさる可能性は低いと主張し核兵器使用の基準を引下げるよう求めたロシア強硬派の呼び掛けをプーチンは却下した

この漏洩した機密文書により、ロシアの核兵器使用基準が、実際外部に開示されている基準よりも低い事が分かる