たんぽぽの綿毛を見つけた
吹こうかな？

踏みつける？
なんて事はしないよ

ただ眺めていたら
綿毛が飛び立ったよ

取り残されたボクは
空を仰いだ

綿毛の友だちは
舞い上がって行った

そういえば
今日はボクの22才の誕生日だ

ケーキを*
帰ろうかな

「*のショートケーキひとつ」
店内に響く声
そして、笑顔の店員さん

ショートケーキを手に持つボクは
鼻歌を歌った

街中で流れるような
流行りの歌は歌えないけどね

「ただいま」
返ってくる声は無い

お風呂に浸かって
鼻歌を歌う

お風呂で歌う歌は
うまく聞こえるなぁ

濡れた髪を
ドライヤーで乾かす

冷蔵庫で待っていたのは
小さなショートケーキ

この子は
ボクを祝うなんて
思っていなかっただろうね

自然と笑みがこぼれる

「いただきます」

そして、
「ハッピーバースデー」

ケーキを食べていると
鳴ったケータイ

あれ？
相手は母親からだった

『もしもし？』
『元気やっとうと？』

「ああ、元気たい母さん」

『今日、誕生日やろ？』

「うん」

『おめでとなぁ』

「ありがとう」

『生まれてきてくれて……』

「ん？なんばしよっと？」

『ありがとな…』

母さんは泣いてるみたいだ

「なんだよ、母さん」

『……』

「俺も涙出とるよ」

『あはは、２人で涙顔かい』

「母さん、生んでくれてありがとう」

『はは…やめいや、余計に涙出るよ』

「いつでも電話してな」

『んじゃな、バイバイ』

母さんの声を聞いたら
ボクの涙腺は緩むんだな

男だって泣いてもいいと
母さんは言ってた

「ごちそうさま」

最後の*を食べて
ひと言あいさつ。

コーヒーを淹れよう

テレビでドリップコーヒーなるものを
紹介していたけど、

ボクはインスタントコーヒーで
十分なんだ

ここに粉末のミルクを
たっぷり入れるのが好きだ

熱いのが美味しい

ケータイの今日の運勢
ランキング１位だ

何か良い事あったっけかな？

考えていて何も無いなら
それは良い日だった、と
ボクは考える

時間は午後11時を回っていた

歯磨きをして寝よう

22才かぁ…
自分の顔を眺める

変化の違いはわからないけど
１日ずつ老けていくんだよな

また新しい１年が始まる

布団に入り天井を見ていた

物音ひとつしない静かな時間

目を閉じたら
夢の中で

誰かが
「おめでとう」と言った

ボクは
「ありがとう」と
うまく言えなかった

心の中で
「ありがとう」