高校生のとき、バイト代を貯めて買ったギターがある。
あれから35年ほど経つだろうか。
今もまだ現役だけど、所有権は娘に渡した。
ピカピカだったメッキは剥がれ、真っ白だった樹脂は日焼けし、大小あちこち傷もあって、見た目に古さは隠せないものの、良く言えば年季が入って味があるとも。
もともとそこまで高価なものではないから、ヴィンテージにはなり得ないけど。

時々娘の部屋からギターの音がする。
特にここ最近はほぼ毎日聞こえるようになった。
初心者が最初にぶつかる壁、よく言われる「Fの壁」を越えたのだろうか。

壁を越えられず、そこで挫折する人も多いと聞く。
押さえる指の形とか力の入れ方とか、いったんコツを掴んでしまえば別にどうってことないし、実際には握力なんてそこまで必要じゃないんだけど、最初はコツなんてわからないからとにかく力いっぱいに押さえつけて、それでもなかなかキレイな音が出なくて、しまいに指が痛くなって諦めてしまう、みたいな感じだろうか。

「好きこそものの上手なれ」と言うけど、逆に「上手こそものの好きなれ」でもあって、ある程度上手く弾けるようになると俄然楽しくなってきて、あれもこれも弾きたくなるし、もっともっと上達したくもなる。
今はきっと勉強そっちのけで夢中になってるのかもしれない。

親心的には「ほどほどに」と思うけど、35年前の自分だってそうだったわけで、何であれ夢中になれることがあるのは悪くない。
受験はまだ先だし、一時の熱もいずれ冷めて落ち着くだろうから、まぁいいかなと様子を見ている。
同じ趣味を親子で共有できることは素直に嬉しいし、手本を見せたりすると目をキラキラさせて「すげー！」みたいな感じになるから、オヤジの威厳を保つにも役立ってるかもしれないし。

でも、今の自分が夢中になって抱きたいのは、本当はギターじゃなくて…
FというよりGの壁をチョーキングビブラートで鳴かせたいw