ロイター通信社は「アメリカ政府が今年3月29日、中国共産党(中共)によるアメリカの人工知能(ＡＩ)チップやチップ製造ツールの入手がより困難になることを目的とした規制改定を実施した」と報じた。

2022年と2023年10月に発表されたこの規制は、アメリカNVIDIA社(エヌヴィディアシャ)などの企業が設計した高性能人工知能チップの中国への出荷を停止するものであった。

同年4月4日に発行したこの新規制は、166ページに渡り、中国へ出荷されるチップに対する制限が含まれており、これらのチップを使用したノート型パソコンにも適用される。

アメリカ政府は、国家安全保障の理由から、中国への半導体、ＡＩチップ、その他の分野に対する輸出規制を継続的に強化している。

更にアメリカ政府は、ドイツ、オランダ、韓国、日本などの同盟国に対し、先端チップ関連製品の中国への輸出を更に制限するよう積極的に説得している。

これらには、オランダで生産されているフォトリングラフィー装置(「フォト」と「リソグラフィ」を組み合わせたその名のとおり写真の現像技術を応用したパターン作成技術のことをいう)及び関連するメンテナンスサービス。フォトリングラフィー装置の主要な光学部品でドイツで生産されている製品、日本で生産されているフォトレジスト(フォトリソグラフィにおいて使用される光や電子線等によって溶解性などの物性が変化する組成物であり、物質の表面に塗布され後に続くエッチングなどの処理から物質表面を保護するもの)などが含まれる。

このような制限は、明らかに中共のハイテク開発にとって大きな打撃となる。

半導体チップを例に取ると、自動車や携帯電話などの製造に於いて、基幹部品となるフォトリソグラフィ装置(半導体や液晶などの微細な回路パターンなどを紫外線や電子ビーム、Ｘ線などの放射で「露光」する装置を半導体露光装置、液晶露光装置と呼びその工程をリソグラフィ(lithography)と言い特に光放射を用いるものをフォトリソグラフィ(photo lithography)と言う)もチップ製造の中核設備の一つである。

韓国、ドイツ、オランダがアメリカの輸出規制に参加すれば、チップの輸入や製造技術の面で、中共の選択肢が益々制限されることを意味し、中共への打撃はより大きくなる。

習近平が、今年3月にオランダのルッテ首相と会談しオランダ製、フォトリソグラフィ装置の輸出規制の緩和を希望し「開放と協力が唯一の選択肢だ」と話したのもこのためであった。

また、習近平は「いかなる力も、中国の技術開発の進歩を止めることは出来ない！」とも発言した。

しかし、この発言は真実だろうか？

また、そのような自信はどこから来るのだろうか？

習近平は、海外のハイテクエリートが集まる場で、中国市場が話題に上がっていないことや世界が中国とのデカップリングを加速させていることに気付いていないのだろうか？

最近、アメリカと香港Ａ株のマクロ経済研究者で、ファンドマネージャーでもあるアカウント名が、キャプテンジャックと言うネットユーザーが、注目すべき２つの事柄について、SNSのXに投稿した。

一つ目は、未公開株式界では有力者の先輩で、今年3月にNVIDIA社(エヌヴィディアシャ)主催の「GTC2024(GPU Technology Conferenceの略称でNVIDA社が主催する年に一度のカンファレンスを指す。AIアプリケーションおよびソフトウェア開発者向けの技術的なカンファレンスとなっておりNVIDIA社内外のビジネスリーダーや専門家、開発者による講演や、企業によるブース展示などもある)」会議に出席するためにアメリカに行った時の経験で、もう一つはシンガポールに移住した同年代の友人の話しであった。

ＡＩ技術ブームと金融の祭典を間近で見て来た未公開株式界の有力者は、アメリカは依然として技術、革新、金融、人材の中心地であり、衰退していないだけでなく「見渡す限り好景気」だと確信したと言い。

同時に、その場にいる誰一人として彼のような投資家が会議への出席のために中国から来たことに気付かず、彼の中国人としてのアイデンティティや背景を気にする人もいなかったそうである。

NVIDIA社(エヌヴィディアシャ)のGTC会議の内容は「今でもアメリカのテクノロジーやイノベーション、力は世界をリードしており、そこに集まる人材は、他の国々で見つからない」「中国の技術力は、アメリカに大きく遅れを取っている」と言うことなど改めて世界に示すものであった。

中国市場と中国人投資家は、ハイテク会議で冷遇されていたようである。

ハイテクエリート達が、中国市場に関心を示さない現象は、中共政府の頻繁な政策変更と外国企業に対する非友好的な態度と更にアメリカ政府の「促進と規制」が相まって中国に於けるアメリカハイテク企業の利益を大幅に減少させ、多くの外国企業が中国市場から遠ざかっている。

中国市場は最早、かつて程、魅力的では無い。

習近平とアメリカ実業家らとの会談についての中国当局の報告書には「ブラックストーン・グループ、ブルームバーグ・グループ、フェデックス、クアルコムなどのアメリカ企業は、中国の経済発展の見通しには楽観的で、今後も揺るぎ無く広い分野で中国と長期的かつ緊密な協力関係を発展させるだろう」と有るが、中国人投資家の体験は、この内容とは大きく異なっていた。

どちらが真実で、どちらが依り信頼出来るのだろうか？

習近平と会ったアメリカ企業幹部も、中共当局と同じようなことを言うだろうか？

それは表向きのことで、中国に以前投資した資金を依りスムーズにかつ安全にアメリカに引き上げるためである。

ファンドマネージャーでもある、このネットユーザーは未公開株式界の大物が感じた冷たい対応に加えて、シンガポールに移住した彼の友人の気持ちにも言及した。

彼は、最大のギャップは外のことで「中国人が集まる場所以外では、中国の話題について話す人は、殆んどいない」と語った。

彼は「ステージの真ん中から、突然外され主流から見放されたという強い疎外感を覚えた」と言う。

ネットユーザーは長年の海外生活での経験から「一部の政治家を除いて、中国で何が起こっているかを気にする外国人は多く無い」「彼らは中国の歴史や文化について殆んど認識が無く。中国語を勉強し、中国を研究している一部の学生や専門家、学者を除いては、日常会話で中国関連の話題について話す者は殆んどいない」「そして一部の人は、中共の『党文化』は中国文化だと誤って認識している」

善良な人々(法輪功＝ファールンゴン学習者など)を迫害し、新疆ウイグル自治区に強制収容所を建設し、香港の民主主義を抑圧し、更に新型コロナウィルスを世界中にばら撒き、拡散させるなど中共政府のヤクザよりも悪事な行いが、海外メディアに暴露されて以来、中国に対する欧米人の好感度は益々大きく低下している。

一方、多くの中国人は長年、中共のプロパガンダに洗脳され、中国が強大で世界的な影響力を持つと誤って信じているため、欧米人との考え方に大きな落差がある。

今、中共と中国を混同している外国人や中国人達は、中共が中国を統治する前、世界には中国文化を賞賛する人や多くの著名人達がいたことを知っているだろうか？

中共が中国を統治する前を知る彼らの目には古代東洋文化は、とても魅力的で美しく映っていた。

しかし、中共は政権を掌握した後、伝統文化と、それを担うエリート達を排除するキャンペーンを実施した。

一方、メディアや教育などを通してマルクス・レーニン主義を人民に強制的に植え付け、更に習近平は毛沢東主義の普及も企てている。

このような教育環境の元で、人々は中国伝統文化から徐々に遠去かり、信仰心も道徳心も無い中国人は、際限無く好き勝手を繰り返し、社会道徳も日に日に悪化している。

今の中国の混乱全てが、これに関連していることは疑いの余地が無い。