中国の改革解放の初期、多くの台湾企業が中国本土に進出し、中国は次第に「世界の工場」となっていった。

しかし、近年、中国当局の政策変更により、ビジネス環境は益々、不安定になり、台湾企業を含む多くの海外資本が中国から撤退し、インドやベトナムにサプライチェーンを移転している。

台湾の鴻海グループ傘下のフォックスコンもその一例である。

今年、5月以降フォックスコンの撤退ニュースが嵐のように河南省を駆け巡った！

フォックスコンの大規模な撤退は、河南省にどれほどの影響をもたらすのか？

先ずは、河南省がフォックスコンにどれほど依存していたかを見てみよう。

2010年にフォックスコンが鄭州市に進出して以来、フォックスコンは鄭州市の対外貿易の殆どを支えてきた。

データに依れば、フォックスコンは一時期、鄭州市の輸出額の81.5%を占めていた。

つまり、河南省の対外貿易の繁栄にフォックスコンが大きく貢献していた。

これは、一部の側面に過ぎず、フォックスコンの鄭州工事には約30万人の従業員がおり、更にフォックスコンに依存する上流と下流の企業、例えば飲食業や宿泊業を含めると、全体で100万人を超えると推計される。

鄭州市の常住人口は約1200万人で、労働人口は約700万人とされている。これは労働人口の7人に1人が、直接的かつ間接的にフォックスコンに依存して生計を立てていることになる。

雇用機会、税収の貢献、そして不動産価格への影響などフォックスコンは、河南省の経済に於いて重要な役割を果たしていた。

データに依ると昨年、河南省に於けるフォックスコンの影響力は、他の企業とは比べものにならないものであった。

フォックスコンの昨年度の輸出入額は、4000億元(約8.8兆ｴﾝ)にも達し、鄭州市の輸出入貿易の74%を占め、河南省全体で見ても、フォックスコンは全体の50.3%を占めていた。

今年の第一四半期、河南省の輸出入貿易は、前年同期比で30.9%も減少した。

輸出も減少し続け、以前の1000億元(約2.2兆ｴﾝ)近くから、現在は652億元(約1.4兆ｴﾝ)に留まっている。

これらの状況は、フォックスコンの撤退に依る影響が大きい考えられる。

以前、フォックスコンが撤退を仄(ほの)めかした時、中国の一部のネットユーザーは「さっさと出て行け、フォックスコンが無くても世界は回る！」と投稿した。

確かに地球は回り続けているが、鄭州市のフォックスコン産業チェーンは、ストップした。

20万人以上のフォックスコン従業員が、失業に直面しているだけでなく、その背後には数え切れない家族がいる。

また、工場周辺の飲食店や宿泊施設なども、大きな影響を受けている。

少なくとも数十万人、あるいは100万人以上の人々の生活が脅かされたことになる。

河北省廊坊市にあるフォックスコンの駐車場を見ると、かつて車で埋まっていた駐車場が、今はガラガラになっている。
道路脇の駐車スペースも、かつては満車だったのに今は空っぽになってしまった。

昨年8月、フォックスコンの創業者である郭台銘(かく たいめい)氏が、台湾での総統選への出馬を表明した。

しかし、２ヶ月後フォックスコンが中国で税務調査の対象となった。

この事から、中国共産党当局が郭氏の出馬に不満を抱いていることが伺える。

北京当局は、以前から政治的手段で台湾企業に圧力をかけて来た。

民主社会では、企業が政治に影響を与える事が出来る事を知っているからである。

例えば2021年、台湾の遠東集団が税務調査を受けたが、その主な理由は遠東集団が、2020年に多くの民進党陣営の候補者に資金を提供したと言われたためである。

また、2016年には台湾の海霸集団が税務調査を受けたが、その理由は蔡英文総統の一族と密接な関係があると噂されたためであった。

北京当局による台湾企業への抑圧は、冷やかな効果を生み、彼らに中国でビジネスをすれば、常に家財を没収され家族が消されるリスクがあると感じさせている。

中国市場が、どれだけ大きくても外国企業は、投獄されるリスクを常に抱えている。加えて「国安法」や「反スパイ法」などの法律を使って中国当局が、やりたい放題できるため、多くの外資系企業が中国からの撤退を加速させている。

ベトナムのメディアは昨年夏、フォックスコンがベトナムに3億�jを追加投資し、3マン人を雇用する計画だと報じた。

今年2月、フォックスコンはベトナムと45�fの土地を2057年まで借用する*を結んだ。

フォックスコンは昨年5月、インドのテクノロジー・ハブであるベルガール郊外の広大な土地を3700万�jで購入することを発表した。

フォックスコンはインドで、約９つの製造拠点を運営しており、30以上の工場を持っている。

2025年までにフォックスコンの生産の約30%が、中国本土外で行われると予想さている。

フォックスコンの中国撤退に伴い、32マン人の雇用も無くなった。

現在、鄭州市航空港経済総合実験区の歩行街(商店街)は、かつての繁栄を失いフォックスコンが進出した当時の活気は無くなり、一時は「小さな香港」と呼ばれていたものの今は、その面影も無くなった。

フォックスコンの鄭州工場、32マン人の従業員について考えてみよう！

フォックスコンが撤退すると彼らは失業し、その多くが低学歴の若者であるため、再就職の機会は大きく失われている。

もし、この30万人以上がフードデリバリーの仕事に従事することになったら、誰が食べ物を注文するのだろうか？

最近、中国のネット上で、ある男性が土下座してフォックスコンに謝罪する投稿動画が話題となっている。
男性は「自分は以前、フォックスコンをブラック企業だと思っていたが、地元の靴工場で働いてみて、フォックスコンの良さに気づいた」と話している。

この男性は、靴工事ではトイレにも自由に行けないが、フォックスコンでは2時間毎に10分の休憩があり、喫煙エリアも有ったと述べた。

靴工事では、作業で手袋が必要で一日3元を自腹で支払っていたが、フォックスコンでは工事が毎日、手袋を支給していた。

また、賃金の比較では靴工事では月給が、4500元で、毎日午前6:50〜夜11時まで一日17時間労働であるのに対し、フォックスコンでは一日10時間労働で、4500元の月給だった。

更にフォックスコンでは、病気になっても医療費を負担してくれ会社が費用をカバーしてくれるのに対し、靴工場では社会保険すら用意されていなかった。

しかし、時既に遅しフォックスコンは既に撤退しており、河南省に再び戻ってくることは無いだろう！

これが、習近平のトホホな経済政策である