同窓会には行かない
昔から伝記や自伝を読むのが好きだった。
そうして故人や画面に映る人を、高潔で素晴らしい人間だと思って憧れていた節がある。
でも、最近になってこの手の本を読むたびにがっかりさせられる。
誰かの自伝を読むと、面白いもので関連する他の人の自伝も読むものだが、同じ事件でも人によって見方が違って面白い。
最近だとレジス・ドブレは、自身の話の中では、ゲバラに協力した革命の志士みたいな存在だが、ゲバラの伝記を読み限り、キューバ諜報部門に対外宣伝要因として利用された挙句、何の役にも立たないどころか脱出する際にベテランゲリラをひとり犠牲にしただけだ。
ゲバラもゲバラだ。
初めてできた妻は不細工だったが、子供が出来てしまったので仕方なく結婚したとかいう情けない事情なんか知りたくなかったし、強烈なリーダーシップで革命を実現した男が、コンゴのゲリラ戦士のマネジメントでヒーヒー言ってたなんてことも知りたくなかった。
しかし、自分にも責任はある。
どうも、自分の中で、成功した偉人には完全無欠を求める傾向にある。一つの分野で優れていただけなのに全知全能の高潔な人物かと思ってしまう。
でもいいじゃないか。
僕の心の中でくらいかっこいいままでいてくれたって。
それが自分や社会の悪い影響を及ぼすわけでもなし、わざわざ自分から現実を見に行く必要はない。
だから、僕は同窓会にもいかない。
学生の頃にあんなに可愛かった人が、ハンプティダンプティのようになっているのは見たくない。
綺麗な思い出は綺麗なまま取っておけばいいじゃないか。
もしかしたら、僕に好意を持っていた人だっているかもしれないんだ。