ワンルームディスコ 4
ガザカザッ
ドス、ドス
燃えるゴミの袋が積み上げられる、よかった。ちょうどゴミ出しの日だった。福岡市は日没後にゴミを出していい。この街のいいところだ。
部屋を掃除していると、気付いた、食料品や生ゴミがない、だから虫がいない。なんていうか、無機質。有機物のうねりを感じない。
「普段ご飯とかはどうされてるんですか?」
「あー、外食ばっかりですね、私、自炊とかできないんです。」
「この周辺って美味しいごはん屋さん多いですよね、羨ましいです。」
「そうなんですよ、安くて美味しいお店が多いから、友達誘って行っちゃうんです」
排水溝にハイヒールが刺さっていた、電子レンジやトースターもない。冷蔵庫くらいしか家電がない、片付ければ片付けるほど部屋が広くなっていく。沼でも砂漠でもない、なにか明確なゴールがある、ひたすら片付ける。半分以上はゴミだった。
「え、すごい!これいつ買ったんだろう!?欲しかったんですよ!この化粧水、あーでももう無理だ」
「え?化粧水って賞味期限みたいなものがあるんですか?」
「賞味期限ではないですけど、使用期限?があるんですよー、これ2年前のだ」
肌に染み込ませる水に使用期限があったのか、ということはここからはもう彼女すらも何があるか分からない領域に入ったのだろう。さっきからずっと何かを見ては懐かしがっている。美意識も高く、物を大事にする。現代のカッコいい女性だ。