最近、河南省鄭州市で行われた若者達の夜間サイクリング活動が大きく注目を集めた。

数万人の大学生達が鄭州市(ていしゅうし)から出発し、シェアサイクルで約50㌖離れた開封市(かいほうし＝河南省東部にある地級市、中国でも最も歴史が古い都市の一つであり歴史上幾度も「戦国の頃は魏(ぎ)」「北宋(ほくそう)」等で都市とされた、11世紀から12世紀にかけて世界最大級の都市であった)に向かった。

真夜中には自転車の列が数十㌖にも及び、この大規模なイベントは全国各地の大学生や他のグループにも波及した。また、模倣する動きも広がり拡大した。

その影響力の大きさから中国当局(中共)も注目し、類似(るいじ)の活動を禁止する緊急命令を発表した。

「夜間サイクリングで開封市に行く」と言うムーブメントは、今年6月に鄭州市に住む四人の女子大生達が開封市の灌湯包(ガンタンパオ＝中華料理の小吃の一種で皮の中に餡と共にスープが入っていることが特徴で南京市では「名物」とされる)を食べるために、鄭州市から5時間ほど掛けて、50㌖以上離れた開封市まで、自転車で旅をしたことに端を発した。

彼女達は、その体験をSNSで共有し多くの関心を呼び、模倣者が増えた。参加者は次第に増加し規模も拡大した。

これを受けて開封市は一部の観光地を夜間に大学生に無料開放することを決定した。

更に参加者のために休憩用のベッド、無料の食事、観光地までのバスまで提供した。

また体調を崩した学生には無料で、鍼灸や理療を施すサービスも行われたと言う。

この活動が、SNSで大きく注目される中、北京や西安など各地の大学生達が鄭州市に飛んで参加した。また、退役軍人も活動に加わるようになった。

ネット上で拡散されている動画には、数名の若者達が自転車に乗りながら「河南で8年間、武装警察をやっていた。夜間サイクリングで開封市へ！」と叫ぶ男性や「空軍で8年、夜間サイクリングで開封市。退役軍人は、いつまでも誇りを持っている！」と言う男性。

また「退役軍人として、怪我をしても仲間から離れない。夜間サイクリングで開封市へ行こう！」と語る女性の姿が映し出されていた。

他にも陸軍やロケット軍の退役軍人が参加していた。

この活動は、河南省に留まらず、他の地域でも、大学生が自身の故郷でサイクリング•イベントを企画するようになった。

例えば、江蘇省南京市では数万人の大学生達が、安徽省巣湖までのサイクリング(約160㌖)を計画した。

四川省成都市の大学生達は、夜間に都江堰までのサイクリング(約59㌖)を計画。

湖北省武漢市の大学生達は、東湖凌波門へのサイクリング(約56㌖)を行った。

以前には、陝西省西安市の大学生達も咸陽へのサイクリング計画を発表していた。

更に、天津市宝宝坻区から109㌖離れた、北京市の天安門広場までのサイクリングを試みる大学生達の姿が動画投稿も有った。

しかし、中国当局(中共)は、この活動が制御不能になる可能性があると感じたのか？
公式の報道が一夜にして大きく変わり「交通混乱を招く」として、活動の停止を求めた！

11月9日(土)には、鄭州と開封の両都市の交通警察が、相次いで交通規制を発表した。

河南省内の多くの大学が学生達に対し、期限内に帰校するよう通知し、キャンパスの閉鎖措置を進めている。

ある大学では河南省教育庁と学校側が、夜間サイクリングについての緊急会議を開いた「開封に向かう学生数は、既に20万人を超えた。一般の参加者も多い。更には海外の敵対勢力が加わっている可能性もある」と指摘していた。

また、学校のグループチャットでは「この活動が、政治運動に発展しているため、参加すると将来に悪影響が出る」と学生達に警告するとのメッセージが流された。

別の動画には、鄭州市の主要交差点で、警察が配置された映像も有った。多くの警察官が人垣を作ってサイクリング参加者を排除する様子が映し出されていた。

興味深いことに、この夜間サイクリング活動の参加者は、政治的な主張を一切していなかった。

中国共産党(中共)に対する抗議行動も見られなかった。

多くに学生達には、国旗を手に持ち国家を唄う姿が見られた。

しかし、それでも当局による緊急規制の対象となった。

著名な時事評論家の蔡慎坤(さいしんごん)氏はX(旧Twitter)で、中国共産党(中共)は、若者達が自発的に組織化することを最も恐れている。これはくつての白紙運動に似ている。若者達は、存在を示す独自の方法を見い出している。しかし、彼らは一体何を伝えたいのだろうか？それは“卒業即失業〃と言う現実への無言の抗議なのか？それとも、この貧乏旅行を通じて共産党が、彼らの厳しい状況にもっと関心を持つことを望んでいるのか？」とコメントを寄せている。

また、一部のネットユーザーは「このような大規模な学生集団行動が、1989年の天安門事件を連想させる」と指摘している。

夜間サイクリングに参加した大学生の中には「自由を求める！」と書いたスローガンを掲げる学生も出現している。

現在の中国経済は低迷している。若年層の人口比率も減少している。

将来に希望を見出せない若者達の間で、失望が積み重なっている。

中国当局は、若者達の自発的な集団活動に対して、極度の警戒心を示している。

彼らが政治的な要求を持っているかどうか、或いはその動機が、どれほど些細なことであろうとも、若者達が集まって何か一つのことを行うことだけで、共産党当局は大きな不安を感ずるのだろう！