醜い中年の日常。
仕事中、車内で待機がてら書類の整理をしていると
突然、バンッと衝撃があった。
(!?)
すぐに外に出て、グルッと車を確認したのだけど、特に異常はない。
すぐ近くでトラックの運転手が、バーン!と乱暴に荷台の扉を閉めていたので、その衝撃がこっちまできたのかと考えて、車内に戻った。
(それにしても、近くのトラックの扉の開閉くらいで揺れる車体の脆弱さってどうなのよ?笑)
と、1人で苦笑いしていると、コンコン!っと窓を叩く音がする。
見ると、黒人のハーフなのか、デザインパーマさながらのクルクルヘアの少年が立っている。
「すいません!車にボールを当ててしまいました。本当にごめんなさい!」
一瞬、何のことかと思ったけど
あー、そうか!さっきの衝撃はそれか。
「どこにぶつけちゃった?」
車外に出て、少年に聞くと
「ここのところに、、それでボールは、下に入ってしまいました」
車体の下を覗き込むと、マフラーの下あたりでサッカーボールが挟まっている。
パッと見たけど、特にキズもないようだし
何より、肩を窄めて泣きそうな顔で何度も謝っている少年を、それ以上詰める気にもなれなかった。
「大丈夫だよ、気をつけてね」
深くお辞儀をして走っていく少年を見送り
ああ、今日もまたひとつ良い事をしてしまったと、ひとり悦に浸り帰宅していると、途中から急な雨が降り出した。
(なんだよ、洗車したばっかなのに、ついてないな)
ワイパーのシフトをオンにする。
ギュ、ギュ、ギュィーン。。
リアワイパーが動くたびに、異音がする。
すぐに、近くのコンビニの駐車場に入り、リアワイパーを見てみると、カバーが割れていた。
あのクソ餓鬼ぁ。。
そこには、善人ヅラした、醜い中年の姿があった。