3.11の思い出
3.11のあった時、自分は高校2年生最後で翌年度には受験生になる年だった。校舎で、夕方自習をしていると、突然2回大きな揺れが来て、昔習ったように大きな柱の近くに移動したのを覚えている。その日は、全線で止まってしまって、家には帰れなかった。翌日以降、東京では一定の地域で計画停電が行われ、自分の地域も対象だった。そうであっても勉強はしていたと思う。被災地の大変さとは違いそこまで不自由な印象は無かった。ある日計画停電のタイミングで、父が少し散歩しようと言ってきた。それまで父とは仲が悪い訳ではなかったけど、ギャンブル好きの彼のことは少し苦手だった。子供の頃よく偵察と言って、遊技場で2、3時間待たされていた。最初の頃は、1パックのカードをもらってたけど、それも無くなり、ただ暇だった。他にも思い出はあったと思う。それでも父に対する印象は良くはならなかった。特に何を話す訳でもなく、真っ暗な川沿いをふたりで歩いていた。暗くて、静かだった。こんな時に言うのもあれなんだけどさ、父が呟く。なんかこの雰囲気悪くないな。何となく意味は伝わった。わかる。自分のこれまであった日常と、日常に少し侵食してくる非日常が揺れて、真っ暗な川沿いの道に溶ける感じ。それ以外会話もなく、30分ただ、ゆっくりと歩いた。別に今も仲は良くは無い。ただあの夜の、ただ会話もない、川沿いの散歩は生涯忘れることのない父との思い出になった。