早いもので、あっという間に１年が過ぎて
佐賀まで迎えにいったニガオエに、
種付けしたキングズベストの初子が生まれた。

父キングズベストは今年の春に天寿を全うし、
天国に旅立った3日後、この子馬が生まれてきた。
とても女子とは思えないほどのお転婆で、
飛んで跳ねて、
額にカッコいい流星がある

今年はニガオエにディスクリートキャットを付けた。
ナンバードアカウントがクロスされるからだ。

昨年の春、
佐賀競馬場で
成績が振るわなくなってきて、
間もなく食肉にされるところだったニガオエ

厩舎と当時の馬主にお願いしてやっと*もらった。
調教師からは、厩舎を開業して10年以上になるのに、ここから北海道に繁殖に戻れた馬は初めてと聞いた

ニガオエを馬運車に乗せたとき、
大昔に競馬を知って、
初めて好きになった競走馬タケノベルベットに
漸く少しだけ恩返しできたと思った

タケノベルベットという馬は
エリザベス女王杯というG1レースを勝った馬で
ニガオエのおばあちゃんにあたる。
漆黒の馬体でとても美しい牝馬だった。

翌年、タケノベルベットが初めて子馬(タケノハーモニー)を生むときに、たまたま立ち会えた私は、それから競走馬の応*に目が眩んだ。

2014年春、そのタケノベルベットが鬼籍に入り、タケノハーモニーに会いに北海道に降り立った。

年老いたハーモニーには栗毛の牝馬が生まれていて、それがこの世に残した最後の女の子になった。
名前はニガオエと名付けられた。

２年後、母ハーモニーも旅立った。

それから３年間、45戦、62600メートル、祈る思いでニガオエを見守り、遂に佐賀まで迎えに行くことになる。

私のしてあげられることはほんのささやかだけど
人間の夢とエゴの狭間に
命を輝かせて生きるサラブレッド
少しでも生を受けた悦びを
感じさせてあげられたらと願っています